好きなアニメ映画について語ろう

 私は好みがかなりひねくれていると思っている。ので、アニメ映画と言っても君の名はとか、ジブリとかについては語らない。

 カルト映画が好き、と言ってしまえば簡単だが、どこまでがカルトかというのは難しい問題だ。スターウォーズブレードランナーだって広義のカルト映画なわけだし。私

がカルト映画だと思うのは、この映画が好きだという感想をネットで見たら小躍りしたくなるような映画のことだ。

 くどくど前置きを書くのはやめておこう。

これがカルトかよ?と思う人もいれば、なんだ知らない、ブラウザバックという人もいるだろう。

 

 こんな記事を書こうとしたのも、先日ファンタスティック・プラネットの無料公開があったからだ。

gyao.yahoo.co.jp

これを久々に見て、数々のカルト映画を思い出したのだ。無料なのだから、この機会にこの作品もぜひ見てほしい。

 青いサムネイルを見ておっ(前のめり)となった人と、おっ(後ずさり)となった人がいると思う。私は後者だし、ほぼ後者だと思うが、「ナウシカの元ネタ」と聞くと「そんな古典があったのか」と気にはなるのではないだろうか。

 1973年のフランス・チェコ合作作品だ。タイトルで画像検索するとウッとなる世界が広がっている。

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いや……あの……

 風邪を引いた時に見る夢のようだ。といっても私は実際風邪のときこんなにファンタジック(ファンタジック……?)な夢を見たことはないが。
 ファンタスティック・プラネットは、この絵本の挿絵のような美しい悪夢が、75分間切り絵方式でヌメヌメ動く。あなたの胃が不調なら今は勧めないが、この青いのはフランス語でベラベラ喋るから安心して見てほしい。ストーリーまで奇々怪々……というわけではなく、王道のSF。映画の半分までくると登場人物に感情移入してしまうから不思議だ。

 私の好きなシーンは……鳥を捕まえて食べ……るわけではなく、地面に叩き付けて「ワハハハハ」と笑うオッサンの顔をした生物が出てくるところ。

 

  • 優しく雨ぞ降りしきる

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暗いSFが好きならぜひおさえておきたい

 レイ・ブラッドベリ原作のSF小説をアニメ化した10分ほどの短編だ。冷戦中のソ連が制作したもので、核戦争後のアメリカのとある一家を皮肉たっぷりに描く。ソ連アニメはそれだけで雰囲気が重厚で、「いったいどんな生活をしていればそんな発想が生まれるのか」と思わざるを得ない。

 これも油絵がそのまま動いているような、独特なアニメーション手法で作られている。登場人物はロボットひとり。10分でこれだけやるせない気持ちになるものか……と思う作品だ。

 

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音楽もいいんだよな、この映画

 これは有名だろう。核戦争の恐怖を、可愛らしい素朴な絵柄で冷酷に描いた映画だ。核戦争だか冷戦だかの関連が続くが、この映画のもととなった「Protect and Survive」の映像まで見ていただくと背筋がぞっとすることうけあい。

www.nicovideo.jp

正直このサムネイルだけでゾワゾワする。私はリンクを貼るだけで精一杯。動画はもう見たくない。クリーピーパスタなどが好きな読者なら知っているだろう。冷戦のさなか、核攻撃を受けた際の対処法を宣伝するCMのようだが、あまりにお粗末で乾いた笑いが出る。作品中の老夫婦に「こんな板を立てかけただけで放射能が防げるわけないだろ……」とツッコミを入れたくなる人はここまで見てほしい。こんな老夫婦が大勢いた現実があったかもしれないのだ。

 この作品を表紙にした日本のアニメ雑誌がある。1987年8月号「アニメージュ」だ。英断だと思う、当時の編集部……。

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なんて自由なファンタジー空間なんだろう

 突然日本の映画になる。いわずと知れた名作をアニメ化した作品。

 この記事を書く上で調べて分かったが、ますむらひろしの漫画を原作としているようだ。私は宮沢賢治に明るくないが、謎の多い「銀河鉄道の夜」が猫で描かれていることで、謎の多いあの小説を読んだときの「???」という気持ちが消化されていく気がする。

 なんというか、これも絵本のような純粋な美しさがあり、純粋にああ美しい、ああ儚い、と思える映画だ。子供でも楽しめる作品だと思う。

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なんつーか、素朴な絵柄なのにグロいのが好きなんですよね多分

 なかむらたかしをご存知だろうか。「ナウシカ」「AKIRA」に参加し、「ロボットカーニバル」で独特の作品を展開していたその人だ。

 この作品も「ファンタスティック・プラネット」からの流れを感じるダークファンタジーだ。物語の背景が複雑で、一度見ただけでは理解しきれない。それでもなんだか2ヶ月に一度ふと見たくなって、あの何ともいえない切なさをもう一度感じたい…と繰り返し50回は見た。

パルムの樹 - アニヲタWiki(仮) - アットウィキ

 詳しい設定はこちらで読める。この記事を書いた人と一度語り合いたいものだ。この解説を読んだ上で何回か見てようやく最近理解することができた。

 人間になりたい木の人形パルムと、虐待されてきた少女ポポの純愛が美しい。パルムは愛された記憶しかなく、ポポには愛された記憶がない。同じく愛されたことのない女戦士コーラムの叫びが悲しい。コーラムの「私、頑張ったんだ……」のセリフで毎回泣いている。

 美術と音楽が美しい。「アダルトチルドレン」「精神面でのナウシカ」「綺麗なファンタスティックプラネット」という言葉にピンと来たら見てほしい。

 

 この記事を書く上で「ナウシカ」「ナウシカみたいな」っていっぱい使いすぎてちょっと反省している。だって便利なんだもん。宮崎駿は好きじゃないがナウシカは好きだ。ナウシカはね……